小倉百人一首の世界-2 海野弘


   

定家の山荘は愛宕道の南側にあったらしい。
「結び置きし秋の嵯峨野の庵より 床は草葉の露に濡れつつ」
の歌があり、その風情を伝えている。
この山荘のそばに宇都宮入道蓮生(れんじょう)頼綱の別業(別邸)があり、親しくつき合った。
頼綱は関東の豪族であったが権力抗争を避けて京都に移り、出家して和歌など風流の道を楽しんでいたらしい。
定家の息子為家は頼綱の娘と結婚している。
定家は『明月記』 の嘉禎元年(一二三五)五月に、頼綱に頼まれて、嵯峨中院障子に色紙形を書いた、と記している。
なにを書いたかというと「古来ノ人ノ歌各一首、天智天皇自り以来、家隆雅経二及ブ」とある。
どうもこれが「小倉百人一首」の原型であるらしい。
しかし、今伝わっている「小倉百人一首」と同じであったかどうかはわからない。
天智天皇から家隆雅経までとあるが、「小倉百人一首」は、後鳥羽院・順徳院で終わっている。
『新勅撰集』でもこの二人をはずしたのだから、頼綱邸の障子の色紙でも入れなかったのかもしれない。
これらの問題についてはさまざまな説があり、まだ解決がついていない。「小倉百人一首」は定家の撰ではないという極端な説まである。それについては深入りしない。ここではさしあたって、「小倉百人一首」と呼ばれているのだから、定家が小倉山のふもとの山荘の障子のために、名歌を選んで色紙を書いたこと、そこには後鳥羽院、順徳院の歌は入っていなかったようだが、あらためて二人の歌を入れた「小倉百人一首」が後世に伝えられたらしい、とまとめておこう。

小倉百人一首の世界-1 海野弘

 

私が推薦する特選の1冊です・・・右文書院代表・三武 義彦
百人一首百彩

序章

小倉百人一首の世界-1
海野弘

百人一首は、一人一首ずつ百人の歌人の歌を集めたアンソロジーである。藤原定家が選んだという「小倉百人一首」がそのはじめで、その後、さまざまな百人一首があらわれたが、これが最も親しまれている。
なぜ「小倉百人一首」がこれほど親しまれるのだろう。一つには、鎌倉時代初期につくられ、それまでの王朝文化の中で一つの完成を見た古典的和歌のエッセンスが集約されているからである。
和歌が一般に普及していくようになり、「小倉百人一首」は格好なテキストとして役立つようになつた。
もう一つには、近世に「小倉百人一首」はカルタと結びつき、正月の遊びとなり、ゲームとしての面白さを獲得し、残ったためである。ゲームとして暗記されることで、さらに親しまれることになり、現代に魅力を伝えるようになつた。
では、「小倉百人一首」はどのようにつくられたものなのだろうか。
選者とされる藤原定家は、平安朝に花開いた王朝和歌の最後を見とどけた歌人・歌学者といわれた。「百人一首」はそのまとめであったかもしれない。
定家(サダイエ・テイカ)は、平安王朝の歌人藤原俊成の子であり、若くして、新風をもたらす歌人として知られていた。やがて後鳥羽院が和歌に関心を持つようになり、定家のパトロンとなり、「新古今集」の撰者に彼を任じた。
やがて後鳥羽院は和歌を離れたが、その子順徳天皇が代わってパトロンとなつた。
鎌倉幕府を倒そうとした後鳥羽院は承久の乱(一二二一)に敗れて隠岐に流された。
定家は後堀河天皇の命により『新勅撰集』(一二三五)をまとめた。しかし政治的配慮から、後鳥羽院、順徳院の歌をはずさなければならなかった。
藤原定家は、その日記『明月記』に「紅旗征戎ハ吾ガ事二非ズ」と書いたことで知られる。自分は文人であり、旗を立てて賊を討つといった軍人の仕事には関係がない、というのである。彼がこう書いたのは一一八〇年、まだ十九歳であった。
彼は芸術の純粋な世界に寵り、政治などの俗世に関わらない、と宣言した。しかしその若い想いは次々と裏切られていく。和歌も政治や社会に翻弄されてゆくのである。
時代は平安から鎌倉へと移ってゆく。『新勅撰集』 では政治的な圧力で、後鳥羽院、順徳院の歌を入れられなかった。
「小倉百人一首」は、そのような時に成立したといわれる。小倉というのは小倉山のことである。京
都の西、保津川のほとりにある。川の向かい側は嵐山だ。小倉山の東のふもとに二尊院があり、その前に愛宕道がのびている。その北に厭離庵という尼寺がある。このあたりは嵯峨といわれるが、晩年の定家は嵯峨の山荘に籠ることが多くなる。といっても隠居したわけではなく、さまざまな人晩年の定家は嵯峨の山荘に寵ることが多くなる。といっても隠居したわけではなく、さまざまな人が訪れ、歌会を開き、歌人としての名声は確立していた。

「百人一首百彩」へのご挨拶

 

「百人一首百彩」へのご挨拶

三武 義彦

4月に入って新学期、百年近い右文書院の歴史は、スタートが「国文学出版」で、近年は高校の国語教科書専門の出版社として歴史を刻んで来ただけに、新学期となると今でも胸躍る思いがします。とくに、私自身が、小美濃講師、花見村長と若い時からの古文書研究会仲間で古典文学が好きですから、竹取物語、源氏物語、土佐日記、万葉集、平家物語、宇治拾遺物語、奥の細道、伊勢物語、徒然草、枕草子、百人一首などを手を変え品を変えて出版もし、自分も学ぶことになります。とくに、小倉百人一首を独特の文章と画風で仕上げた、文・海野弘、画・武藤敏の名コンビ作「百人一首百彩」には、その精緻な書画の迫力に圧倒されました。
ここ暫くは「連歌集・竹林の風」にお休み頂き、古典文学の傑作を新鮮に変えた「百人一首百彩」をお届けします。
ご案内は、文が海野弘さん、絵画が武藤敏さん、お二人共数多くの著作を持つ著名な作家です。

 

 

はじめに

武藤 敏(画家)

子供の頃、正月になりますとが百人一首のかるた取りをいたしました。
雪に閉ざされた山奥の小さな村々では、それが唯一の遊びであり楽しみでした。
こたつの上にひらがな十四文字の取り札を並べ、私はなぜかいつも読み手になり、絵のついた読み札を手にしていました。
束帯(そくたい)、衣冠(いかん)、狩衣(かりぎぬ)などといわれる様々な衣装を着た男の人達、袈裟(けさ)をまとったお坊さんなど。そしてきらびやかな十二単衣を羽織ったお姫さまが出てくると、どきどきしました。
いつの頃からでしょうか。この百人一首の読み札の雅(みや)びともいわれる世界を作品にしてみたいと常々考えておりましたが、十年程前にパリを訪れた友人から和紙を大量にプレゼントされたのを機に、制作を始めました。
私は、この百人一首の選者といわれる藤原定家についても、百人一首そのものに村しても、浅薄な知識しかありませんが、おおよそ八百年もの前から綿々と伝えられている百人一首の世界と、子供の頃のときめきの気持を、少しでも表現できればと、願いを込めて制作いたしました。多くの方々にみていただければ幸いに存じます。
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武藤 敏(むとう・びん)
1962年・武蔵野美術大学抽科卒、「夢土画廊」(銀座)にて個展、以後、新聞・雑誌、書籍・ポスターなどにイラストレーションを発表。196う年「中央画廊」(銀座)にて個展、1973年「紀伊国屋画廊」(新宿)にて企画展(おんな展第一回)、1974年・一年半渡欧、1975年 「真木画廊」にて画廊企画、同世代の版画展招待作品「三幸ギャラリー」(赤坂)にて企画展、1976年「紀伊国屋画廊」(新宿)にて企画展(おんな展第二回)、1977年渡欧、1978年郡上八幡にて作品展(郷土文化誌「郡上」主催)、1980年「かなめ屋画廊」(銀座)にて企画展
1982年「81美術館」(銀座)にて企画展、パリに移住、1983年・ギャラリー「MEDIANE-ELKO」(パリ)にて企画展、「紀伊国屋画廊」(新宿)にて企画展、1985年ギャラリー「カシーヌ」(毎日新聞社内)にて企画展。1986年「GALERIER22」(西ドイツ)にて企画展、SpACEDEIPHSALONPETITFORMT」(パリ)招待出品、1987年セネガル共和国ダカールにて企画展、1988年フランス領マルチニック島にて企画展(フランス教育省主催)、1989年ギャラリー「ACCUEILETRENCONTRES」にて企画展、1991年郡上八幡にて作品展、1996年小田急ハルク美術画廊にて個展、2000年郡上八幡にて作品展、「新岐阜百貨店美術画廊」にて個展

連歌ー37

 名残表

1、 輿入れは荷駄も通はぬ峡の村     正謹
2、 思ひもかけぬ大水の出て        忠夫
3、 たぎつ瀬の那智の御社いかばかり  宜博
4、 ま青なる空たぢろがぬ雲        正謹
5、 うつむきて校歌を聞ける球児らに   和伸
6、 作者を知れば名ある人なり       忠夫
7、 奥座敷色紙短冊とりかこみ       裕雄
8、 伏籠の衣かをりたつ閑          紅舟
9、 藤原と源氏の姫の争ひに        忠夫
10、 痛みは探し軽き言の葉         正謹
11、 旅寝する涙も月に堰かねて      牟世
12、 今にも待つと告げよ秋風        宜博
13、 つづりさせ鳴くてふ虫も雌を求め   忠夫
14、 命短し露の芝道             裕雄

——–

初表
はやし
1、歌いざや竹の曲(はやし)に月もがな   宜博
2、虫の声はた惜しむべき宵         紅舟
3、大野ろに鹿呼ぶ勢子のひそむらん     正謹
4、仮庵の軒覆ふ白萩            柏全
5、川舟の漕ぎゆく水の清くして       忠夫
6、涼しき雲を笠の道づれ          牟世
7、いかがはと、思ふ夕立こともなし     和伸
8、鴉の群もしづまりし森          裕雄

連歌ー36

名残裏

1、片隅を照らす業こそ賢けれ    宜博

2、 かすめる月の夕べ涼しき    正謹

3、端居してさらり着流す麻衣    紅舟

4、 濁りにしまぬ篠笛の音     牟世

5、風よ吹けなほも聞きたし村はづれ 裕雄

6、 ちまたに立てるをさびとの占  忠夫

7、朝影に盛りの花の匂ひいで    朋世

8、 若草のぶる息長の道      執筆

連歌ー35

名残表

1、つがなきままに暮れゆく夕煙     紅舟

2、 広前きよき醜淵の神        和伸

3、住めばよし隔つ都は遠くとも     正謹

4、 あぶく銭手に夫婦酒酌む      紅舟

5、繰る糸を誰が縒り合はす恋ならん   宜博

6、 飾り苧環家苞にして        正謹

7、雨もよひ山ほととぎす鳴き去りぬ   忠夫

8、 涙な添へそ月のなき夜       裕雄

9、行なふは只我が為ぞそぞろ寒     正謹

10、 野分見舞ひに人は来るとも     忠夫

11、紅葉ばはまだき散りたる鮎の群    裕雄

12、 八つの眺めも美はしき国      紅舟

13、峠路を越ゆればそこは雪ばかり    忠夫

14、 とはに絶やさぬ比叡の灯火     正謹

連歌ー34

初裏

1、雪除けの深き庇に朝の蜘珠      紅舟

2、光集めし雫きらめき         正謹

3、奥琵琶の入江の彼のしづかにて    裕雄

4、それかと見ゆる島のみごとさ     正謹

5、神々に捧げし宝幾万         宜博

6、人に知られぬ思ひつのれば      忠夫

7、書きはして届けぬ文を火にくべて   朋世

8、 見上ぐる月のかこち顔なる     裕雄

9、三界に宿なく秋は時雨つつ      宜博

10、天上天下身にしむる頃       忠夫

11、選ぶ人選ばるる人昨日今日     裕雄

12、貧しき道も暖かき空        和伸

13、ひたすらに待てば甲斐ある花心   宜博

14、春の名残の閑かなること      牟世

連歌ー33

筒井紅舟先生喜寿の賀
於 近江奥琵琶湖畔料亭
宗匠 島津忠夫
執筆 光田和伸

賦花之何連歌

初表

1、喜びに彩ふや庭の萩すすき      紅舟

2、 澄む水さらに渡る友舟       柏全

3、夜もすがらうかぶる月に樟さして   忠夫

4、 つかのま峰を越へし横雲      牟世

5、旅立ちを寿ぐごとき鳥の声      正謹

6、 けふの初風吹くもうれしく     宜博

7、貴人も裾ひるがへす夏木立      裕雄

8、 降らじとこそは願ふ行末      和伸

 

連歌ー32

名残表

1、時得たる霞ケ閑の司召し      正謹
2、 秋の都路に鴎外漱石       裕雄
3、行人の空を雁ゆく果てもなし    和伸
4、 墨染の袖濡らし鉦打つ      忠夫
5、 契りきな蠟梅匂ふかたへにて   紅舟
6、 闇夜は閏に凍つるともしび    牟世
7、かはたれの朝なはもて辛からむ   宜博
8、 心挫けそ神ならば神       忠夫
9、言ひつのる誰かは我をとめよかし  正謹
10、 富を求めてたどる山川      裕雄
11、埋め蔵す金たしかにありと聞け   忠夫
12、 上野はただ色もなき風      和伸
13、新墾の田の面に月の照りはえて   宜博
14、 放生の夜に悩む引窓       裕雄

連歌ー31

 

連歌ー32

名残裏

1、御食に鰻御鮎岩の茸        正謹
2、 心伝ふる酒も澄みつつ      和伸
3、泉より遠く運べる水もよし     忠夫
4、 流れのあたりあげは蝶舞ふ    裕雄
5、つれづれをままにひねもすもとほりて 牟世
6、 平野いく重に糸遊たちぬ     宜博
7、四方に満ち老木ながらぞ花づもり  和伸
8、 よろこび更に春もたけなは    執事

連歌ー30

名残表

1、時得たる霞ケ閑の司召し      正謹
2、秋の都路に鴎外漱石          裕雄
3、行人の空を雁ゆく果てもなし    和伸
4、墨染の袖濡らし鉦打つ       忠夫
5、契りきな蠟梅匂ふかたへにて      紅舟
6、闇夜は閏に凍つるともしび     牟世
7、かはたれの朝なはもて辛からむ   宜博
8、心挫けそ神ならば神        忠夫
9、言ひつのる誰かは我をとめよかし  正謹
10、富を求めてたどる山川      裕雄
11、埋め蔵す金たしかにありと聞け  忠夫
12、上野はただ色もなき風      和伸
13、新墾の田の面に月の照りはえて  宜博
14、放生の夜に悩む引窓       裕雄

 

連歌ー29

名残裏

1、片隅を照らす業こそ賢けれ       宜 博

2、かすめる月の夕べ涼しき        正 謹

3、端居してさらり着流す麻衣       紅 舟

4 濁りにしまぬ篠笛の音         停 世

5、風よ吹けなほ鳥聞きたし村はづれ    裕 雄

6、ちまたに立てるをさびとの占い     忠 夫

7、朝影忙盛りの花の匂ひいで       朋 世

8、若草のぶる息長の道          執 筆

 

連歌ー28

 

初裏

 1、またしても空かきくらし降る雨か  忠夫

 2、 俄の風の方定まらず       正謹

 3、老いの声若人の声こもごもに    裕雄

 4、 ささやきあまし恋はくせ者    忠夫

 5、なほ許せしばしとてこそ膝まくら  紅舟

 6、 この先のこといかになるらむ   牟世

 7、鰭酒の酔ひのはやきを知る知らぬ  宜博

 8、 霜雪霰まろぶ道の上       和伸

 9、暇夷人も和人もつどひ住める町   忠夫

10、 夏も名残の月の涼しさ      正謹

11、沖つ波たちて棹歌朗々と      牟世

12、 川尻近く水ぬるむころ      忠夫

13、幻も現に愛づるけふの花      裕雄

14、 ぅちにいろいろやどる若草    和伸

連歌ー27

 

賦一字露顕連歌

 初表

 1、瀬音聞く庭もあたらし萩の宿    裕雄

 2、 わたる土風すだく松虫      紅舟

 3、山の端のほのかに明かく月見えて  忠夫

 4、 ふもとをこめてしづむ夕霧    正謹

 5、七曲りすれど小径の途切れざる   宜博

 6、 装ひもかろく旅をゆくらむ    柏全

 7、遠近に名のりも髙きほととぎす   牟世

 8、 植えすみひろき田居のやすけさ  和伸

連歌ー26

 

 名残表

 1、朝衣いざ着て駒を急がせよ     和伸

 2、 夢の浮橋架けかはるらし     宜博

 3、ありし日のかたみの扇色あせて   忠夫

 4、 思い出ばかり落ちる瀧つ瀬     裕雄

 5、蝉しぐれ鳥の声にも眼(まなこ)伏せ 正謹

 6、 清き心を常に持ちつつ       忠夫

 7、野の宮に籠もれば恋は捨ておきし   宜博

 8、 曽羅の香止まぬときめき      裕雄

 9、薄紅も白粉も誰のためにこそ     和伸

10、 爪立ちて受く甘きくちづけ     紅舟

11、街角を照らすガス灯積もる雪     正謹

12、 月冴えわたる荻の上風       裕雄

13、語りつぐ八島軍の物がたり      忠夫

14、 唐錦なる旗はいづ方        宜博

連歌ー25

 

  謹賀新年

初裏

 1、せせらぎを香に包まれて聞く今宵   正謹

 2、 琴の調べも雅も忘れず       紅舟

 3、明石にて時を重ねて乙女さび     忠夫

 4、 砧を打ちて待ちし幾年       裕雄

 5、月髙し偲びかへせる新枕       和伸

 6、 固き番に蔵守る秋         正謹

 7、底光る葵の紋の鎧宮         忠夫

 8、 無責任とや誹られるまま      裕雄

 9、さざ波のごとく綾なす幕のうち    宜博

10、 なも観世音ただ祈るのみ      忠夫

11、父母はいかに夕べの鐘わたり    和伸

12、 煤ぶ繭玉照らす炉明かり     正謹

13、近江なる古き村々花の里      裕雄

14、 都は春のにぎはひならむ     忠夫

連歌ー24

 

源氏物語千年紀記念連歌

 賦山何連歌

  初表

 1、白露に色ます萩の宿りかな    正謹

 2、 鈴虫すだく深き竹むら     柏全

 3、空はるか月はゆかしき影指して  牟世

 4、 すがすが風の吹く舟の上    紅舟

 5、一声のこだまとなりてひびくらん 忠夫

 6、 山並み見せぬ冬の野もなし   和伸

 7、尋ぬれば林の雪はなお積もり   裕雄

 8、 籬(まがき)のうちに残る土くれ 宜博

連歌ー23

 

 連歌ー23

  名残表

 1、斧の柄の朽木の谷に飛ぶ蛍       裕雄

 2、 若狭に越ゆる手だて途絶えて     忠夫

 3、さこそまで雪に訪うべき人やある    宜博

 4、 身をそぎて得る幸の重たさ      正謹

 5、焼き上ぐる赤楽茶碗宙(そら)を抱く  紅舟

 6、 水の姿はただおのづから       宜博

 7、歌びとのいまはひそかに寺を守る    忠夫

 8、 紅さし指は何にせやとや       和伸

 9、別れより逢わぬ恋路を選び来し     正謹

10、 すすきの原は思い出の中       裕雄

11、小面の内より覗く月くはし       紅舟

12、 笛のひびきも身にしむるころ     忠夫

13、あらばやの幾たりを野に送りつる    和伸

14、 着せたき衣にむなしさを知る     裕雄

連歌ー22

連歌ー22

 初裏

 1、あげまきの心(うら)めざましき夕まぐれ  忠夫

2、 身に添ふごとく風薫るらむ        宜博

 3、群れなさぬそは一本の杜若         正謹

 4、 情けも深き八つ橋の沢          紅舟

 5、鐘の音は昔変わらぬひびきあり       柏全

 6、 竹の庵のま酒に酔う           牟世

 7、破れ障子さのみいとはぬくらしにて     紅舟

 8、 いつとはなく人を待つ燠(おき)     和伸

 9、しづけさに思いつのれる冬の月       正謹

10、 山あり川も美しき村           忠夫

11、力なく名もなく霞むわが定め        裕雄

12、 芽ぶけ世に出よあふげいにしへ      和伸

13、神さびのみちにふたたび花を見ん      宜博

14、 長閑に過ぐる時を頼みに         正謹

連歌ー21

 

 文音(発句より初折裏7句まで)

 賦何草世吉連歌

 発句 山の端や やうやく今日の 月出でぬ  忠夫

  脇  輿を迎ふる 屋戸の初萩       紅舟

  3 年ごとの 虫の声々 聞きあかで    裕雄

  4  寂しぶる机に うず高き書      正謹

  5 水茎の 跡もゆかしき 歌あまた    宜博

  6  綾ぎぬなびく 船君の舞       牟世

  7 羽根ならで 鄙の長手は 尽くしつつ  和伸

  8  牛飼う野辺を 覆う雨雲       裕雄

 

連歌ー20

 

 連歌ー20
名残裏

1、掃き目よき白砂に聞く潮の音      正謹

2、 海女の苫屋といふはたはぶれ     忠夫

3、渡り来し珍(うず)の香りの何やらん  宜博

4、 天にも届く夏雲の峰         和伸

5、時ならぬ氷雨は石をひたに打つ     紅舟

6、 いざ飛び立てと親鳥の声       裕雄

7、さればこそ行きつ戻りつ花の道     忠夫

8、 敷島なべてうららかな日々      執筆

島津忠夫 8   有川宜博 6
筒井紅舟 6   堀江牟世 3
鶴崎裕雄 7   光田和伸 6
藤江正謹 7   筒井柏全 1

連歌ー19

 

  名残表

 1、斧の柄の朽木の谷に飛ぶ蛍       裕雄

 2、 若狭に越ゆる手だて途絶えて     忠夫

 3、さこそまで雪に訪ふべき人やある    宜博

 4、 身をそぎて得る幸の重たさ      正謹

 5、焼き上ぐる赤楽茶碗宙(そら)を抱く  紅舟

 6、 水の姿はただおのづから       宜博

 7、歌人のいまはひそかに寺を守る     忠夫

 8、 紅さし指は何にせよとや       和伸

 9、別れより逢わぬ恋路を選び来し     正謹

10、 すすきの原は思い出の中       裕雄

11、小面の内より覗く月くはし       紅舟

12、 笛のひびきも身にしむるころ     忠夫

13、あらばやの幾たりを野に送りつる    和伸

14、 着せたき衣にむなしさを知る     裕雄

連歌ー18

 

初裏

 1、あげまきの心めざましき夕まぐれ  忠夫

 2、 身に添うごとく風薫るらむ    宜博

 3、群れなさぬそは一本の杜若     正謹

 4、 情けも深き八つ橋の沢      紅舟

 5、鐘の音は昔変わらぬひびきあり    柏全

6、 竹の庵の旨酒に酔う        牟世

 7、破れ障子さのみいとはぬくらしにて  紅舟

 8、 いつとはなけれ人を待つ燠(おき) 和伸

 9、しづけさに思いつのれる冬の月    正謹

10、 山あり川も美しき村        忠夫

11、力なく名もなく霞むわがさだめ    裕雄

12、  芽ぶけ世に出よあふげいにしへ  和伸

13、神さびのみちにふたたび花を見ん   宜博

14、 長閑に過ぎる時を頼みに      正謹

連歌ー17

 

島津忠夫先生ご叙勲記念連歌

於 紅林文庫七賢亭

宗匠 鶴崎 裕雄
執筆 堀江 牟世

  賦何草連歌

 初表

 1、山の端ややうやく今日の月出でぬ  忠夫

 2、 輿を迎える屋戸の初萩      紅舟

 3、年ごとの虫の声々聞きあかで    裕雄

 4、 寂ぶる机にうず高き書      正謹

 5、水茎の跡もゆかしき歌あまた    宜博

6、 綾ぎぬなびく舟君の舞      牟世

7、羽根ならで鄙の長手は尽くしつつ  和伸

 8、 牛飼う野辺を覆う雨雲      裕雄

連歌ー16  名残集

 

  連歌ー16

  名残集

 1、もろこしの賢き人も身にしみて   忠夫

 2、 歌会をはやす虫のもろもろ    正謹

 3、丹の舟を下りて休める国原に    和伸

 4、 継ぎて吹き来る風新たなり    宜博

 5、駅路のその上語る石畳       正謹

 6、 光のどかにさし入るところ    忠夫

 7、ほころびし花たちまちに咲き揃ひ  宜博

 8、春をことほぎ立つ初の虹      執筆

   光田和伸 16 藤江正謹 14
島津忠夫 21 堀江牟世  3
鶴崎裕雄 11 筒井紅舟 17
有川宜博 18

連歌ー15 名残表

 

 名残表

 1、遠近に八十八夜の声聞こえ     紅舟

 2、 美濃の狭路は目にもやさしき   宜博

 3、吾妻より入りし東氏の跡どころ   忠夫

 4、 城取り返す歌の誉れは      紅舟

 5、強矢にもまさる筆香りたち     宜博

 6、 ひと生は恋に明くるまぼろし   和伸

 7、かたくなにしじまを囲む主にて   正謹

 8、 掛樋の水の涼しさを聞く     忠夫

 9、時鳥昼はとどまる群木立      和伸

10、 色に目覚めし午睡の夢に     紅舟

11、ま愛しと哀しとあとも先もなく   和伸

12、 投げし言の葉とり返してむ    正謹

13、澄み渡る月にこだまの響きをり   宜博

14、 床に七種生け添ふる秋      紅舟

281014

連歌ー14  三裏

 

綾部市の七福神です。

連歌ー14

 三裏

 1、露草の昼もへたらず秋たけて     和伸

 2、 雲を残さず野分け去りゆく     正謹

 3、背を向けて離るれを追うせつなさも  紅舟

 4、 男は所詮弱きものかも       忠夫

 5、たおやめを産めば勝ちてふ世もありて 正謹

 6、 末に出揃う海山の幸        宜博

 7、七福の船は着きたり宝積み      紅舟

 8、 唐土の鳥も飛びな渡りそ      和伸

 9、すさまじき師走の月と誰が言ひし   忠夫

10、 なべて雪なれ物ひとつなく     宜博

11、鉢取りて火をもてなせることもあり  紅舟

12、 知らざりき君ここに座すとは    宜博

13、ろくろひくと苫屋は花にうづもれて  和伸

14、 茶碗の銘は霞一文字        忠夫

連歌ー13

 

 連歌ー13

 三表

 1、鋭き心嬌めることなく育まん    正謹

 2、 教えの道もかたき世の中     忠夫

 3、古への聖者も今は敵となり     裕雄

 4、 法王ことば取り消すことも    忠夫

 5、綸言といえば汗とはなるものを   宜博

 6、 我慢くらべの根くらべする    和伸

 7、磯に聞くいつ鳴き止むか濱千鳥   裕雄

 8、 光源氏も耳そばたてよ      忠夫

 9、われはわが磐長媛に敷かれつつ   和伸

10、 薩摩なればの習い尊き      宜博

11、極細の木綿の糸は絣織       紅舟

12、 川付け替はり興る殖産      正謹

13、激つ瀬も月は流れず流されず    紅舟

14、 駒牽きの武者ただ一騎立つ    忠夫

連歌ー12

 

 連歌ー12

 二裏

 1、霧深き不破の関守ひとり酒      裕雄

 2、 いまは医者にて句碑ばかりなり   忠夫

 3、刻まれし字句厚らかに苔むして    紅舟

 4、 修羅道におつ妄執のあと      忠夫

 5、暁の鐘に己をかへりみむ       裕雄

 6、 青さを変えぬ空のともしさ     和伸

 7、突き出でし杉の一本なお伸びよ    宜博

 8、 神も照覧あれとこそ聞け      忠夫

 9、弾きすさぶ調べいつしか興に乗り   正謹

10、 早雲流れ楽をとよもす       紅舟

11、東は在明細き涼しさに        和伸

12、 貝寄せもよき季のうつろひ     裕雄

13、津の国の花の盛りをたずねまし    忠夫

14、 声に導く幼な鶯          宜博

連歌-11

 

 連歌ー11

二表

 1、富士の峰は又なき上に空髙し     和伸
2、 人穴暗くつづく話も        忠夫

 3、こはいもの見たさに仲間連れだちて  裕雄
4、 とどまるもあり先立つもあり    牟世

 5、やうがまし役どころまつまつりごと  正謹
6、 思ひは同じ昔も今も        忠夫

 7、海よりもなほ拠りがたき女男の境   宜博
8、 波枕より手枕がよき        紅舟

 9、雪を聴く離れ小島の旅の宿      裕雄
10、 流され人の声しのびつつ      忠夫

11、取りめでて八尺に余る弓の丈     和伸
12、 歌舞伎の幕の降りてしづけし    紅舟

13、月見れば浮かるる心ととのひて    正謹
14、 野を鳴きわけし虫もさまざま    宜博

連歌ー10 初裏

 

初裏
1、絵師の筆思ふにまかせ運びゆく    忠夫
2、 朝な夕なにつづくたびびと     裕雄
3、百年に開く帳(とばり)の仏たち   宜博
4、 大き小さき滝のいろいろ      忠夫
5、柔肌の透けたる白き水衣       紅舟
6、 くぐれば龍の宮城の富       裕雄
7、力なく鷹は鳩ともなりつらん     宜博
8、 春をもたらす風ありがたし     正謹
9、花満つる枝に揺らるる皇子の籃    紅舟
10、 朧月夜の睦まじき影        裕雄
11、かろき世に重き恋などなしてみむ   牟世
12、 七代を限る契りはかなし      宜博
13、末野まで焦がれこがれの草紅葉    和伸
14、 残る暑さを耐え堪えて幾日     正謹

連歌ー9 初表

 

長月賦何人連歌百韻

         於 紅林文庫七賢亭
於 紅舟美術館連歌所
宗匠 藤江 正謹
執筆 筒井 紅舟
賦何人連歌
初表
1、湧くごとき萩のひと家と尋ねはや   和伸

 2、 流るる川の音のさやけさ      忠夫

 3、高々と遠き山の端月出でて      裕雄

 4、 折から群れし雁わたり来る     宜博

 5、まれ人のこころにかなふ竹の色    正謹

 6、 姿そのままゆづりうけたり     牟世

 7、庵の戸を繰りて眺むる石の庭     紅舟

 8、 ひくき雲より雪しづむころ     和伸

連歌ー8 名残裏

 

名残裏

 1、島めぐる船もまばらになりゆきて   忠夫

 2、 津々浦々に帰る村あり       裕雄

 3、要あらば磯魚漁り食せ町のひと    正謹

 4、 とぎれとぎれに道つづくらん    宜博

5、いくたびも出合う標(しるべ)のやさしくて 牟世

 6、 透き渡殿(すきわたどの)をわたるやは東風(こち)紅舟

 7、狩衣(かりぎぬ)に花降る宵の又となし

 8、 春の筵に七賢人         執筆

有川宜博ー6、筒井柏全ー1 島津忠夫ー6 藤江正謹ー6
光田和伸ー6 筒井紅舟ー7 鶴岡裕雄ー6 堀江牟世ー6
       この項 了

連歌ー7 名残表

 

 名残表

 1、相生の松めでたしと祝い膳      忠夫

 2、 沖から見ゆる青き山なみ    裕雄

 3、真帆あげてゆけば波切の音しづか 正謹

 4、 高く低くとカモメ群れ飛ぶ   宜博

 5、来ぬ人を待ちいしままに日も暮れて 牟世

 6、 夜もがらに織る御衣の錦    紅舟

 7、添ひとぐる果ては野末の樹ともがな 和伸

 8、 フリサシクセと高ぶりてゆく  忠夫

 9、法の道六十路のわざを慰めむ   裕雄

10、 男の子あるべき雪よりさむく  正謹

11、をみなの名負うてはげしき風となる 宜博

12、 濁り酒欲し柚味噌など欲し   牟世

13、十三夜満たぬ月こそゆかしけれ  紅舟

14、 器用のひと生おもふひややか  和伸

連歌6 賦朝何連歌 初裏

 

 初裏

 1、隠し湯に黄蝶ひとつが連れそひて   忠夫

 2、 室町心ひねもすのどか       裕雄

 3、在すかり歌にもてなす花の御所    正謹

 4、 吉なる夢は人にな告げそ      宣博

 5、振る袖も色はつつまじ忍ぶまじ    牟世

 6、 変若(お)ちかへりなむ広きみ胸に 紅舟

 7、これやこの天満つ小野の神やしろ   和伸

 8、 大杯を飲みほす男         忠夫

 9、月明くほのかに笑う雪の庭      裕雄

10、 木犀の香のほしいままなる     正謹

11、笠の尾を締めて踊りの輪の中に    宣博

12、 染あざやかな後の袷着       牟世

13、伝え来し文箱の塗りの透け初めて   紅舟

14、 おほぢおほばやえみなつかしく   和伸

連歌5 賦朝何連歌

 

連歌5 賦朝何連歌

初表

1、白雲の恵みや水の澄む京(みやこ)   宣博

2、 秋晴れわたりそよぐ群竹       柏全

3、窓近く虫の音しげく聞こえ来て     忠夫

4、 間遠に紛る山のかりがね       正謹

5、まどかなる月に数ふる影ならむ     裕雄

6、 さあらば誌せ旅の種ぐさ       紅舟

7、降りかはる雨を先ず経る力とし     和伸

8. 野はひろびろとかかる朝虹      牟世

連歌4 名残裏

 

 連歌4 名残裏

 1、音もなくくぬか雨の降るひるさがり   紅舟

 2、 営みするはただ振子のみ       正謹

 3、六十路経し網をつくろふ浜育ち     裕雄

 4、 形も変わらぬ島山の数        和伸

 5、冬来れば雪をいただくばかりにて    忠夫

 6、 蓑笠をぬぐ陽もうららかに      裕雄

 7、花の雲ここを京(みやこ)の小野の里  和伸

 8、 七の賢しき人の集う春       執筆

島津忠夫ー9 光田和伸ー8 筒井柏全ー1
筒井紅舟ー7 鶴岡裕雄ー10 堀江牟世ー2 藤江正謹ー7

この項 了

 

連歌3 名残表

   この部屋で連歌が詠まれます。

名残表

 1、陸奥は言の葉ひとつ分けがたし    和伸

 2、九郎も苦労つもりこそすれ     忠夫

 3、衣の裏は緋なりき君しのぶ      紅舟

 4、黒き女の運命かなしき       裕雄

 5、外国のことないひそひとむかし    忠夫

 6、寒く大河は魚も通わず       正謹

 7、谷底にしろがね光る橋高く      和伸

 8、今日を最後の気動車のゆく     忠夫

 9、ゆるやかな時のうつりをふりはらひ  正謹

10、涼しき月の街をさまよふ      裕雄

11、まとひたる生絹の透きて蛍狩り    紅舟、

12、香に立つ恋の姿いろいろ      和伸

13、山寺の鐘もなつかし遠き日々     裕雄

14、父母の亡き郷に帰りて       忠夫

連歌2 会場の七賢亭

    連歌 会場の七賢亭

 初 裏

  1.  里人のこぞりて聞くやほととぎす  裕雄

  2.  無何有の家は夢ごことして     正謹

  3.  手枕に月日も早き龍の宮      和伸

  4.  身もこがしつつうましおとづれ   裕雄

  5.  逢いみての後なればなほしたはしく 牟世

  6.  物語絵を購ひて読む        忠夫

  7.  伝ひきし土蔵ふかき匂ひもや    紅舟

  8.  志野の徳利に善所の盃       裕雄

  9.  月まどか峡のながめも和ませて   正謹

  10.  二百あまり十日ことなく      和伸

  11.  みのり田に群れて雀の遊ぶらむ   紅舟

  12.  願いて返す苗代の土        裕雄

  13.  あらかじめ祝ふ祭りに花ふりて   忠夫

  14.  笛や太鼓の囃子のどけく                  正謹

 

    連歌は、詠み手夫々が上は5・7・5、下は7・7と即座にくり返すだけに、                                                    充分に頭を働かせないと座がもちません。
しかも、前述のように一定のルール(式目)を知らないと歌が詠めませんので                    ルールだけは事前に熟知していなければなりません。                               他の人がすでに詠んでいる句に類似した字句、季語などがダブると違反になります。
 絵で違反詠みした場合とか、去嫌(さりきらい)などで、同季や同字、                       あるいは類似した詞などを嫌う規定で、このような慣習がいくつかあります。
また、発句の中から一字をとって「何」に当てはめ、名称としますが、                                その何という字が前か後に付きます。
 今回の連歌集は、賦白何連歌(ふしろなにれんが)といい、                                         風など目に見えないものを顕す白の後に何の字が付いています。                                         これが賦(ふ、ふせ、ふし)になっていて、白から何かを想像して句をつくることになりす。
つづく

竹林の涼風

 賦白何連歌(ふしろなにれんが)

 

   奥美濃も名所(などころ)とせん萩の庭 

平成16年9月、爽やかな風が竹林を吹き抜けます。
この竹林奥の七賢亭で、冒頭の島津忠夫宗匠の発句から連歌会が始まりました。

 

 

 賦白何連歌

 初 表

  1. 奥美濃も名所とせん萩の庭     忠夫

  2. 風さわやかにひらく草の戸     柏全

  3. もの言はず虫すだく径尋ね来て   裕雄

  4. 川霧深く冬隣るらし         正謹

  5. 江の空に残る月さへなつかしく    和伸

  6. 小舟棹さしいざ漕ぎ出でな      紅舟

  7. 旅の果て幸はふ先のあやまほし   牟世

  8. 山にも野にも甲高き声        忠夫

 連歌について

 和歌の上の長句5・7・5と、下の短句7・7・七を別の詠み人が        交互に作って百句までの百韻連歌(ひゃくいんれんが)が基本です。         千句連歌などと続けて、ひとつの壮大な作品に仕上げる文芸文化が連歌で、      万葉集の時代から文化人の知的遊びとして伝えられています。

 江戸時代中期からは36句の歌仙連歌(かせんれんが)が            和歌をも凌ぐ勢いで流行しますが、やがて俳句の登場で衰退の道を辿ります。

 連歌の最初の句をお発句(ほっく)といい、                     座に招かれた主客が詠みますが、必ず季語とけじめの切れ字を入れるのが      ルールです。

 連歌の締めくくりの句を挙句(あげく)といい、                この句の詠み手も「挙句の果て」として重要な役割となります。

 連歌では、同じような発想や言葉の繰り返しを輪廻(りんね)といって       避けねばなりません。

 なお、句の中に物の名前を隠して読み込む連歌を「賦物(ふしもの)」といい、   これを推察する力量も必要になります。
つづく

    

連歌集・竹林の風について

村長より。
この度、開運道「皆様の家」の『読み、書き、出版』を担当する三武義彦顧問を紹介します。
hp

 

三武顧問は{日本の心・武士道」サイト担当の小美濃清明顧問共々、              私とは古文書研究会理事時代から30年来、共存共栄、相互扶助の精神で           援けあってきた掛け替えのない仲間です。
この連歌集・竹林の風は、平成25年2月に(株)右文書院より発刊されました。          その格調高い作品の数々を関係者のご厚意でここに連載させて頂くことになりました。
読み、書き、出版』担当顧問略歴(敬称略)。

三武 義彦 (みたけ よしひこ)

東京都出身、大田区在住。9月1日生。中央大学卒。
俳号・二畳庵。                                               (株)右文書院(大正7年創業、高校国語教科書他歴史書&教育図書分野 で著名)             代表取締役                                                 (株)さつき書院社長。                                            教科書協会会員・国語国文学出版会会員。
「連歌集・竹林の風」編者略歴(敬称略)。

筒井紅舟(つついこうしゅう)

日本伝統文化研究会紅の會会長、紅舟美術館紅林文庫館長、日本文芸家教会会員、   現代歌人教会会員、裏千家茶道正教授。                                著書&編書に歌集「花幻」「袖の月」など多数あり。
--------
平成16年9月5日、午前11時、藤江正謹宮司の乗用車でに同乗されて、島津忠夫先生はじめ御連衆が到着された。応接間で休憩されて後、紅仁庵の香席にお通しした。

目の前に 萩咲きこぼる 舟館  忠夫

「連歌集・竹林の風」は、上の文章から始まっています。

島津忠夫・・・この名に私(村長)の目は点になってしまいました。
島津忠夫さんといえば、つい二カ月ほど前の新聞の訃報欄に載っていたばかりの       大阪大学名誉教授。                                             それ以上は知りませんから慌てて調べると、                              瑞宝中綬章受勲、日本の国文学者。                                   中世文学専攻で連歌・俳諧・和歌の研究者で文学博士。                        現代歌人集会理事長。                                           「島津忠夫著作集・全14巻・別冊一巻、和泉書院」。                          第20回角川源義賞受賞。                                         第31回現代短歌大賞受賞、冷泉家時雨亭文庫顧問・・・その他、限りがありません。

この「竹林の風」は、島津忠夫宗匠を中心として開かれた連歌の集いでの作品集で、竹林を吹き抜ける涼やかな風を詠っています。

では、次回からのスタートを楽しみにお待ちください。

日本見分語録 高橋 禮子

日本見分語録

高橋 禮子

アメリカを離れ「日本の二十九年」語るダニエルいま四十九

動的な語りにジョークの味付けとくればみんなが満たされてゆく

前列中央の席がすべり込みセーフの私に与えられてる

山型弁わがものとして「んだんだ」のシーン語れば笑う会場

講演でなくて公演ダニエルのひとり舞台にあふれるオーラ

三百の人らの心を逸らさないダニエル・カールの全力投球

シーソーに自慢と謙遜乗せながら九十分を締め括りたり

青森ほたて  高橋 禮子

 

青森ほたて

高橋 禮子

珍しい客に驚く陸奥湾を起点となせる青森ほたて

一瞬の戸惑いあれど説明書のぞき安心「貝の開き方」

殻つきのほたておまけに生きているきりきりと力む初体験なり

一つ開き二つ開きて十開く次第に慣れてほたてを知り行く

驚いたやれば私も出来るのだ引いてはならぬ体験学習

貝柱白く光って恋をする少女のように畏まってる

ヒモのぬめりを包丁の背でとるなんて昨日の私に不可能でした

ふたつなる津軽・下北半島の気に触るるよう師走の七日

半月  高橋 禮子

 

半月

高橋 禮子

そういえば「かあさんはね」という科白ひとたびもなく今日の冬晴れ

大きな桃が流れて来ることなかったね竹の林の風のくちぶえ

ゆずいろのバスタブにいて仰ぎ見る空の半月静かに照れり

神様の思し召しかも知れません子の分までも走り続けよ

やっと出たあしたは雨の天気予報みんなが潤い憂欲しがっている

風のくちぶえ  高橋 禮子

風のくちぶえ
             高橋 禮子

空っぽのびんの呟き「壜」の字に日のあり土あり雲さえあるよ

わがこころ言葉とシンクロできる日は歌も自在に転がるけれど

子を産むもまた産まざるも自然ならつまりは同じどちらも同じ

遺跡の丘のあわいに沈みゆく夕日尊しブロンズレッド

あなたの子産みたいなんて思うこと遠い昔にあったのだけど

何かたりない  高橋 禮子

 

何かたりない
高橋 禮子

一日に三十分ほど歩くべし始めていまだ三日目なれど

ときおりは止まるとんぼとにらめっこ私も赤い蜻蛉になって

どなたにも強い味方はいるのです影の伴走「背筋を伸ばせ」

道までもはみ出すさつまの軍団が花のむらさき掲げています

そういえば芋の素性はヒルガオ科多年草なる植物だった

少女期のわれが出てくるわが視線空に向いてる夢求めてる

おもむろに消えてゆく恋いくつした何か足りない私の人生

かがやく  高橋 禮子

 

かがやく
高橋 禮子

負うものをあっけらかんと放り投げ安らぎ得たり葉月の風に

向き不向きあるがヒトなり私はこの世にたった一人のひとなり

二十年住めば庭さえ馴染みゆくブルーベリーを実らせながら

一日にひと日減りゆく人生を小鳥のごとくついばむわたし

胸のうちにたまりいること思いきり吐きだして得るこの快感を

ああつまり正直にあれということか石川遼の拳かがやく

ひまわりになったつもりで立ち止まる畑の小径をゆるり歩いて

ターンベリー  高橋禮子

 

ターンベリー

高橋 禮子

ごぜん四時まだ覚めておりがっちりと両手につかむ全英オープン

これまでにメジャー観戦まるでなくゴルフボールもほど遠きもの

ふた晩を徹して眺めるライブこそ雨あり風あり波まで髙し

石川のかげる表情追うわたしいつの間にかギャラリーめきて

自然とのかつ自分との闘いの深さを見せて苦戦のタイガー

王者にも遼にも無かった決勝ラウンドけれど確かな二人のゴルフ

ゴルフ観る楽しさ知った私ですターンベリーの風を睨んで

台風   高橋 禮子

台風
          高橋 禮子

台風に閉じ込められてる私の装いまさにソバージュ禮子

ものすごい南の風邪に真向かいてひとつ勝負を挑みたくなる

役ひとつ下りて得たるかヒトの持つ野性ソバージュ回れよ回れ

十日ほど前の新聞読みながら時の道筋さかさにたどる

北東へ向かう台風その速度五十キロなりもっと急げよ

雲が雲を追いかけている台風の別れのエリア 空一面に

寝るまえに「オレンジ玉子」二つ吞む朝の野性を育むために

コラージュタイム 高橋 禮子

コラージュタイム

高橋 禮子

私のかける電話のその一ついつでも近くにいませんばかり

同郷のよしみとばかりJリーグ鹿島二連覇もろてにつかむ

強さとはかくして積み上げゆくものぞ野沢のゴールの値千金

ときおりは袖を通さん並びいる服の退屈紛らわすために

歌集など出すよりお洒落をしてごらん捨てておけない春の囁き

明治生まれの父がテニスをしてたこと近ごろしみじみ眩しと思う

旧姓を呼ばれ一気に若返る今と昔のコラージュタイム

集いくるYMCA・OBの輪の中にあり渦まろやかに

ダザートを三人分もたいらでてガラスの器とにらめっこする