月別アーカイブ: 2015年3月

箱の重さ  高橋禮子

青春の便りびっしり詰められて箱の重さは一・五キロ

読み返すレターそれぞれ三角の四角の愛をころがしている

棄てるには惜しいフレーズ五つ六つ拾いて呑めり誰も見ていぬ

とっときの箱のひとつを無に戻し生れたる空間わたしの未来

バトラーの後ろ姿に似ています沈まんとする五時の太陽

シフトチェンジのためであったら一日を内に隠りて誰とも話さぬ

ななめなる日差しを浴びん北風の洗礼受けん大樹のごとく

自が影に怯えることはないだろう烏地上に影を走らす

地に生きる植物なべて潔しいかなる風にも抗うことせず

歪んだ真珠  高橋禮子

半端じゃない恋をしたことあったっけ歪んだ真珠は歪んだままに

マイペース解かずにおこう球となれバウンドめざせと忠告さるるも

初夏の風に消ゆるひとつの出会いマリヤカラスは気のはやいバラ

小粒ゆえ相手にされざるじゃが芋が降りくる雨に洗われてゆく

乾きゆくネイルカラーが紫陽花の花びらほどにおゆびふるわす

花の神フローラがいてあなたがいて私がいる水無月のゆめ

水だより  高橋禮子

透き通る二月の空よ画布となれ描きてゆかんわれのこれから

水瓶座生まれでよかったわが肩に言葉湿らすみずがめひとつ

冷えのこるやよい二日の桜山ぐるり巡るも人まばらなり

咲くまえの桜大樹に耳を寄せしかと聞いてる水のたよりを

負けるのはことさらいやという人の洩らす言の葉カサリかさかさ

水茎とうことばころりと転がりて〈水を言葉も欲しがっている〉

春まろむポストの赤に差し出さん夕べ潤う手書きのたより

ひそやかにみずを香らす水だより君にひとこともう春ですね

烈公もごらんの通りさわさわと湧きでる泉に人ら寄りくる

花のあっぱれ  高橋禮子

赤坂の松葉屋製の胡麻どうふ健康志向のきみのたまもの

うすずみの空より雫が零れそう枝を切らんと身を伸ばすとき

誰しもが思いのままにいきるらん反発もまた順応もまた

ラグビーの開幕戦にどっぷりの私をだれも制御できない

忍耐もここまででした突然の霜にカンナが首うなだれる

やらざるはやるに如かずと庭に出て拾う落ち葉の二十リットル

盛りなる夏の胡瓜の勢いがそのまんまなるあなたの古漬け

ガリ版のヤスリを燃えないごみに出す浮世の仁義果たさんとして

ことわりもなく侵入する老化こそしたたか者のズバリ筆頭

イソギクの花のあっぱれわが庭の小春びよりに波打っている

ぶるるんる 高橋禮子

履かれずにごみとされたらかなわない夢にいでくる下駄の呟き

箱入りの朱塗りの下駄をとりいだすふた昔前の紅いろごころ

紅いろの爪皮はずさずこのまんま履きて歩まん大正ロードを

活かさねば活かすからこそ物ならん五月からころ下駄ウォーキング

ドーナツ盤八十九枚処分する過去のひとつを忘れんがため

黄の色の袋にどさり入れられて別れを告げゆく小型のレコード

とかげには蜥蜴の言い分があるだろう逃げる逃げないこちらの勝手

ふじいろに染めてもらおう大藤のシャワー浴びてふるるんるんる