月別アーカイブ: 2015年5月

 竜のたわむれ 高橋禮子

竜のたわむれ
高橋 禮子

わが世界ぐんと広がる竜神の大吊橋のセンタースポット

百メートル下に水面があるんだね空中に立つことすら忘れて

もういいかい遠く聞こゆるもういいよ 村人見たる竜のたわむれ

呼吸

とがりいる葉の先にまですんなりと雫留める七月の稲

歩くには雨こそよけれマイナスのイオンが深き呼吸を促す

哀しみと喜び同居の日もあらん松ぼっくりが背中合わせだ

すれちがうひとの挨拶こんな日は複式呼吸忘れないでね

六十の門  高橋禮子

六十の門
高橋 禮子

こもれ日を肩にふわりと止まらせて歩む私も森のはだか木

てのひらに今日の天気を転ばせる菜の花ばたけのローヤルゼリー

ああそうだ青海チベット鉄道に乗りて5000の高地をゆかん

東南の角に建てたる白き家ひかりと風を常に離さぬ

せかせかと取りて来たるが年ならんこれより先はあわてず焦らず

五十代には門あらざりき心意気なくとも自然に走ってこられた

細々とまた太ぶとと伸びてゆく草よいずれも気負いを見せず

バープルの風が辺りを震わせて円かに朱し六十の門

値千金  高橋禮子

値千金

3万の市民ランナー笑ってる 雨ニモマケズ市民ランナー

必死なるレンズの捉える雨の滴 大きく膨らみ選手に重なる

小松菜がこんなに臺(うてな)を伸ばしたか 人の背丈をまもなく超ゆる

太陽にかざす菜のはな花明かり 車を停めて寄る人のあり

見つめたらどんな答えを出すのやら 花とつぼみとアイコンタクト

きみどりに恥じらいためて蕾(つぼみ)言う 光にくるんで食べてごらんよ

花になろう花になろうと陽を追いて 伸び続けるも華の一心

うら若き畑の主がやってきて 八本たおりてブーケを成せり

黄のいろのブーケを抱く人だけに 届く囁き耳をくすぐる

水吸えば日を浴びればの一途さを もらっておこう明日にために

マルーンの壺に活けられ風格を 示すほどなり小松菜の花

見るもよし見つめるもよし食むもよし ここにもあった値千金

空のコメント  高橋 禮子

空のコメント
高橋 禮子

散らずして花芽を守るブルーベリー深き緋のいろ睦月の葉っぱ

深紅なるロングドレスに身をつつみ長く生きよと空のコメント

六十をみっつもよっつも越えたこと私ばかりではないけれど

塀ひとつ塗りかえただけでこんなにも変わるんだっけ新しき年

元旦に届けられたる胡蝶蘭わが世のはるの道連れとなる

必ずという語がここで生きるのだわが日常の用語としよう

十三の胡蝶が二十にふえているひと月の愛の成果であろう