月別アーカイブ: 2015年6月

ガラスのクッキー  高橋 禮子

ガラスのクッキー
高橋 禮子

はつなつの壁は練り色わが影を捉えてしかと未来のレリーフ

親もなし夫なし子無し版木ありどこか似ている江戸の子平に
(林子平「六無の歌」)
人生をがらりと変えよというひとの踊る「初恋」祈るがごとく

ひた走る風のトンネルさみどりのマイナスイオンに包まれている

透き通るものが好きだと言ったって食べられないよガラスのクッキー

森のペルシア  高橋 禮子

森のペルシア
高橋 禮子

悠久の流れにどっぷりつからんと 上野の森のペルシアにひとり

黄金のリュトンのライオン翼あり アケメネス朝の威を煌(きら)めかす

高貴なる人いて戦もありしこと辿りながらに2007年

昔むかしの不思議示すや眺めいて飽きることないこぶ牛形土器

バーチャルの世界を歩いているようなこの静寂は何なのだろう

どなたかの肩との間(あわい)より見やるしかないガラスのケース

平成の人らがいっぱい歩きいてペルシャの市場で一瞬思えり

そうだったイランの旧称ペルシャなり二つが妙に重ならぬ間に

公園の角に転がり大栗がろんろんりいペルシャを語る

エトランゼ気取る私をときおりは眺めてあげようアルバムワープ

しばし一九と   高橋 禮子

しばし一九と
高橋 禮子

虫食いの木の葉が一枚飛んできた 差出人は十返舎一九

孤独なるきつねかたぬきが化けいるや 虫食いだらけの木の葉の一枚

滑稽本の作者一九にあおられて 開くたよりはひまわりの黒

事実など問わずにおこうその後は しばし一九とタイムトラベル

頑(かた)くなる文字転がれる木の葉こそ 消してもらおう土砂降りの雨に

十返舎一九が笑う「やるんなら江戸のこっけい見せておくれよ」

撮られる心  高橋禮子

撮られる心
高橋 禮子

おもむろに解(ほど)かれてゆくわが心 よき被写体になれるだろうか

アングルを少し変えれば作品は 大いに変わる歌も写真も

驚きが弾けるようにストロボが 焚かれて私の心が写る

シャッターを切る右腕の鋭さに 眼(まなこ)引かれてクライマックス

ゆうゆうに時を流して時止めて いかなる私が生まれたのだろう

もしかして何か詠めそう魂が 上気している心撮られて