月別アーカイブ: 2015年8月

撮る   高橋 禮子

 

撮る
高橋 禮子

白鳥のありのままなる生があり生につながる大塚池あり

五年間大塚池に足運び得たる成果が「白鳥を撮る」

佇めば愛語を聞かせてくれそうな求愛シーンをよくも撮りたる

すり寄りし二羽の白鳥とろろんとうるみたる目が写されている

歌を詠むこころ写真を撮るこころいずれもいずれ時は金なり

カメラにてすくい上げたる白鳥の世界を脱けて曇りのち晴れ

葉桜をぬけてゆく風五年間「カラス撮る」氏もいるのだろうか

バスタブに落ちる湯の音響き渡り午前零時の滝となりけり

不思議ふくらむ-2  高橋 禮子

 

不思議ふくらむ-2
高橋 禮子

詩も感動 手品も感動だからこそふたつともやる春のステージ

鬼の首ひとつとったり銀色の玉ふやしゆく手の内知った

本当にいい顔してるKさん顔いくつ持つ

マジックに心ゆだねてしまうとき鳩が飛び出す歌心湧く

画面にはシーバを食みて最高の喜び得たる猫の顔あり

一年の区切りとするか歌舞伎座の「は列13」ゆったりと座す

観るというゆとりを思う玉三郎のお富の団扇かすかに動く

マイナスをプラスに変えるマジックをいつの間にやら身につけており

不思議ふくらむ   高橋禮子

 

不思議ふくらむ
高橋 禮子

おとといが発売日ですと少年が差し出すCDあむろ

微妙なるものには興味を示さぬか子らの好むはタンジュンメイカイ

学級に一人ぐらいは居たはずのスーパーマンがこのごろいない

さきほどの反抗的なまなざしが消えて競いて少年は跳ぶ

たっぷりと寝たはずなのに目の奥に疲れが残るやよいのはつか

のんびりとしてはおられぬ少しづつ子どもに戻るわたしが見える

三冊の歌集作るも子を産むにはしかず北よりの風

那珂川の水が返した三月の光をゆっくりゆくり吸い込む

この腕にボールのごとく短歌など抱え込んだら一気にトライ

ほんものの鳩か否かを問うような眼になるみんなが目を見合わせる

マジシャンに心預けてしまうとき不思議やふしぎ不思議ふくらむ

まひるの時間ー3 高橋禮子

 

まひるの時間-3
高橋 禮子

ロダン作「三つの影」の三人は同じ姿勢でそれぞれの位置

ぴったりの花よと言われそれ以来名をば忘れずダンシングレディー

猫さえも油断しているいつどこでわたしの辞職を知ったのだろう

一枚の紙の重さを確かめる退職の辞令渡されながら

停年の男の教師ていねいに辞令受け取り涙こぼしぬ

クラスの子三十八名共演の労を惜しまぬ離任フィナーレ

卒業を祝う日たっぷり泣いたから涙涸れてる笑って離任

停年の人らに混じり話聞く退職の先取り悪くもあらず

まひるの時間ー2  高橋禮子

 

まひるの時間-2
高橋 禮子

四月より自作自演が可能なりなんでもやれるなんでもやりたい

ヘルペス(帯状疱疹)の痛みに耐えて休まざりし六月辞職の伏線なりき

ヘルペスはわが夏の陣このたびの主婦湿疹は冬の陣なり

主婦湿疹と診断されたる両の手が今更ながらチョークを拒む

マンハッタンに五日遊びぬ学校を辞めるわたしの夏号グラビア

運あらばプラスとならんひらめきで決めてしまった路線変更

ぶらんこの競争しようと子が誘う勝算なけれど負けたくはなし

給食を食べていけばと言う子あり離れたからこそいいこともある

教室の窓よりグランド見下ろせりウイニングランはここにはあらず