2、持統天皇


百人一首百彩-2

海野 弘

2、持統天皇(じとうてんのう) 新古今集 題しらず

春すぎて 夏きにけらし白妙(しろたえ)の 衣(ころも)ほすてふ 天のかぐ山

〔寿が過ぎ、夏が来たようだ。天の香具山に白い衣を干すようになったという〕

夏の白い衣に着替えるために、それをひろげて空気にさらす。奈良の大和三山の一つ香具山の山腹に、そんな白い衣が干してあるのが見える。
『万葉集』では「衣ほしたり」となつていて、直接見た風景がうたわれているが、『新古今集』では「衣ほすてふ」(衣を干してあるということだ)と、間接的になっている。
持統天皇(六四五~七〇二)は天智天皇の第二皇女で、天武天皇の皇后であった。天智の没後、大海人皇子と大友皇子は皇位継承をめぐつて争う。壬申の乱に勝利した大海人は天武天皇となった。
天武の没後、皇后はその仕事を継ぎ、持統天皇となつた。六九四年、藤原京に移った。ここから香具山がまっ正面に見える。
「春すぎて 夏きにけらし」も、藤原京という新都に移ること、衣かえの時であり、新しい自分の世が来たのだ、というように読んでみたくなる。
ともかく、香具山に白い衣が干してある、と′いう非常に視覚的な歌である。

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