百人一首百彩-4

百人一首百彩-4

海野 弘

山部赤人(やまべのあかひと) 新古今集 題しらず

 
田子の浦に 打ち出て見れば 白妙の 富士の高嶺(たかね)に 雪はふりつつ

〔田子の浦(静岡県)に出て見ると、富士の高嶺にまっ白な雪がふりつもっている〕

現代語訳がいらないほどまっすぐな歌だ。雄大な風景が広がっている『万葉集』の原歌は「ふりける」になっている。
田子の浦から見ているのだから、降っているところは見えない。「ふりつつ」はおかしい。
「ふりける」なら、降ってつもった雪が見えている、とい                            l
ゝブことで納得できる。『新古今集』で「ふりつつ」としたのは、改悪である、といわれている。
見たものをそのままに歌う『万葉集』と、見ていないもの、見えないものも歌おうとする『新古今集』のちがいがあらわれている。
山部赤人についても生涯はわからない。人麿と並ぶ歌人といわれた。やはり宮廷御用の歌人だったらしい。流動の人麿、浄頸の赤人といわれたそうである。流れるような動きと浄(きよ)く頸(つよ)いの対比である。人麿は人間の激情を、赤人はのびやかな自然を詠んだ。
山部赤人は聖武天皇に従って紀伊・吉野に行っているので、八世紀半ばに活動している。駿河、下総、播磨などの地方も旅している。

 

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