6、中納言家持

百人一首百彩-6

海野 弘

やかもち
6、中納言家持(やかもち)
新古今集 題しらず

鵠(かささぎ)の わたせるはしに おく霜の しろきをみれば 夜ぞ更けにける
〔鶴(かささぎ)が渡した橋に、霜が降り、白くなっているっそれを見ると、夜が更けたことを感じさせる〕

七夕伝説にちなんでいる。中国の伝説によると、七夕の夜、鶴が天の川に羽根を並べて橋をつくり、織女を牽牛のところへ渡したという。だから、橋に霜が下りて、鶴の羽根を並べたように白く見える、と訳した方がいいかもしれない。鶴は、からすの一種であるが、腹と肩羽が白で、他は黒だという。
だから、鶴が羽根を並べて橋をつくれば、白と黒になつたはずだ。この歌は、夜の黒と霜のしろ白が対比されている。また、七夕という夏の風物を冬の夜に配している。
大伴家持(716または718~785)は父の大伴旅人(たびと・665~731)とともに「万葉集」の代表的な歌人であった。地方官吏となったが、新興の藤原氏が大伴氏を排除しようとし、その政治的な陰謀によって、家持も官位を奪われ、死後も罪をきせられた。このすばらしい歌人は、滅びゆく一族の政治的生活を避けられず、晩年は歌を奪われてしまった。
だからこの歌を、鶴が夏に掛けた白い美しい橋が、冬の霜の橋に変わり、この世も、冬の寒い夜にさしかかっている、と読んでみたくなる。

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