7、安倍伸麿

百人一首百彩-7

海野 弘

7、安倍伸麿
古今集 もろこしにて月を見てよみける

あまの原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
〔大空の彼方を、はるかに凝視すると、ふるさとの春日の、三笠山から出てきた月が見える〕

仲麿は中国の唐に留学している。そこで月を見上げ、それを通して、月の出を見た故国の三笠山をしのんでいる。
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安倍仲麿(仲麻呂) (六九人-七七〇)は十六歳で留学生として唐に渡った。玄宗皇帝に仕え、李白など唐の文人とも交遊した。七五三年、帰国の途についたが、嵐のため安南に流され、中国にもどり、その地で没した。
望郷の想いが切々と伝わってくる。彼の歌はこれ一首しか伝わっていない。どのような時に詠んだのだろケか。それはどのように日本に伝えられたのか。                 一
「ふりさけ見れば」は、頭をぐつとそらして見上げ、目を裂けるように大きく見開いて見よ、という感じだ。また、上天の月を反射板として、その下にあるはずの故国をイメージしている。「春日」は「微か」に通じ、月に、三笠山が微かに映っているとも読めるのではないだろうか。
以上の七人で奈良朝の歌人が終わる。ここまでは序章といえるだろう。そして平安朝に入ってゆく。百人一首の読み札は、安部伸麿となっている。

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