15-光孝天皇

百人一首百彩-15

海野 弘
15-光孝天皇(こうこうてんのう)
古今集
仁和のみかど みこにおましましける時に 人にわかなたまひける御うた

君がため 春の野に出(い)でて 若菜つむ わが衣手に 雪はふりつつ
〔君のために、春の野に出て、若菜を摘んだ。その時、雪が降りだし、私の袖にかかった〕

「仁和のみかど」は光孝天皇のことで、まだ皇子の時に、人に若菜を与えた時の歌という。あなたのため、雪の中で若菜を摘んできました、という素直な歌だ。若菜を食べると邪気をはらうといわれ、若菜摘みは年中行事になっていた。
光孝天皇(八三〇-八八七)は仁明天皇の子で、陽成天皇が十七歳で退位させられたので、藤原基経は、すでに五十五歳、貧乏暮らしをしていたこの人を天皇にしたのである。そして基経は関白となつた。思いがけなく天皇になったが、三年余で没した。
したがって、皇子である時代がずいぶん長かったのである。まさか晩年に天皇になるなどとは思ってもいなくて、あまり野心もなかったらしい。そんなことを考えると、このなにげない歌も面白い。自ら若菜を摘んだかどうかはわからないが、あなたのために、雪の中を摘んできました、という素直な言い方に人柄が感じられる。

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