23-大江千里

百人一首百彩-23

海野 弘
23ー大江千里(おおえのちさと)
古今集 これさだのみこの家の歌合によめる

月見れば 千々(ちぢ)に物こそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど

〔月を見ると、千々に(とめどなく)、ものごとが悲しく思える。秋は私一人のものというわけではないのだが〕

ち(千)と一つが対比されている。作者は、(千々)に、自分の名の千里を意識していたろうか。
おおえのおとんど 大江千里は生没不明。参議大江音人(八二-八七七)の子である。大江音人は、在原行平・業平の兄弟で、千里は甥であるという説もあるが、はつきりしない。音人は文章生として漢文にくわしく、千里も学者として知られた。大江家は学者の家系となり、やはり『小倉百人一首』 に入った大まさふさ江匡房に受け継がれてゆく。
千里の弟は千古(ちふる)で、『後撰集』に入った歌人であった。千里は地方官として伊予に赴任したらしく、また弟千古へのこまやかな思いを歌に詠んでいる。
八九四年、字多天皇の勅で、『自民文集』 の漢詩の詩句を題とした和歌をつくり、『句題和歌』をまとめて献上している。漢詩の和様化に大きな役割を果たした。この歌も、中国の月の詩のモデルがあるのかもしれないが、それを巧みに、日本的な月への想い、秋の哀れへといいかえている。

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