32-春道列樹

百人一首百彩-31

海野 弘

32-春道列樹(はるみちのつらき)
古今集
しがの山ごえにてよめる

山川に風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ もみぢなりけり
〔山川に、風が掛けた柵(しがらみ)ができている。それは流れていかずに引っかかっている紅葉であった〕

「しがの山ごえ」は京都から志賀への山ごえの道で、『万葉集』 にも出てくる古道だ。天智天皇のつくつた大津京に向かい、途中に志賀寺(崇福寺)があった。平安時代には志賀寺参りが盛んだったという。
春道列樹(?-九二〇)は九一〇年、文章生となり、九二〇年、壱岐守(いきのかみ)となったが、赴任する前に亡くなったという。紀貫之などと同時代であるが、あまり多くの歌はのこつていない。
この歌は、山川に、紅葉がひつかかって、柵のようになっているという絵画的な世界をうたい、それを「風のかけたる」と見立てるのが工夫である。
平安後期には志賀寺はなくなつていた。この歌のころには廃墟になっていたろうか。

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