33-紀友則

百人一首百彩-33

海野 弘

33-紀友則(きのとものり)
古今集 さくらの花のちるのをよめる
久方(ひさかた)の光のどけき 春の日に しづ心(ごころ)なく 花のちるらむ
〔のどかな日の光にあふれた春の日なのに、なぜそんなに落ち着かずに、さくらの花は散っていくのだろうか〕

紀友則は生没不明。紀貫之とは親戚といわれる。四十すぎまでほとんど出世できず、藤原時平にそれを嘆く歌を詠んでみせた。時平は彼の歌の才能を認めていた。そのおかげで、紀貫之、凡河内窮恒、壬生忠琴と共に『古今集』の撰者になつた。しかしその時は、かなり老齢であったらしく、
その完成を待たずに没した。『古今集』には、貫之と忠琴の、友則をしのぶ歌が入っている。
友則は、冒今集』までの、古典的で優雅な気品を漂わせる。この歌も『古今集』らしさを感じさせる。
その一方で、窮恒、忠琴、貴之などと同じく、下級役人として、うだつのあがらない悲哀も秘めている。
この歌も、こんなにすばらしい春の日なのに、心落ち着かず散っていく桜に自己投入しているのである。

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