35-紀貫之

百人一首百彩-34

         海野 弘
35-紀貫之(きのつらゆき)
古今集 はつせにまうづるごとに、やどりける人の家に、ひさしくやどらで、程へて後にいたり

ければ、かの家のあるじ、かくさだかになんやどりはあると、いひいだして得りければ、そこにたてりける梅の花ををりてよめる。
ふるさと
人はいさ 心もしらず 古郷は 花ぞむかしの 香ににほひける
〔人の心はわからないけれど、ふるさとの花は昔のままに、春のにおいを薫らせている〕

初瀬は、奈良県桜井市の初瀬、長谷寺1長い詞書がついていて、一篇の歌物語になっている。平安朝には長谷寺の詣りが盛んであった。その時のなじみの宿にしばらくぶりに訪ねると、主人が、この宿はこんなにしっかりと、昔のままにありますよ、と皮肉をいったので、宿の前に立っている梅の枝を折ってこの歌を詠んだ。
紀貫之(八六人ごろ-九四六)は友則、窮恒などとともに『古今集』 の撰者となり、「仮名序」を著、最終的にまとめたといわれる、この時代の代表的歌人である。藤原走方、藤原兼輔などの和歌のサロンに参加し、平安和歌の主流(古今調)をつくり上げた。
変わっていく人、変わらない自然という対比は、貴之の得意とする歌の世界だった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*