70-良ぜん法師(りょうぜんほうし)

百人一首百彩-70

海野 弘
70-良ぜん法師(りょうぜんほうし)
後拾遺集 題しらず

淋しさに 宿を立ち出でて ながむれば いづこも同じ 秋のゆふぐれ
(淋しさを感じて、家を出てあたりを眺めると、どこも同じような秋の夕暮である)

そのまま読んでわかる、訳もいらないように見える歌だ。このように淡々と情景を詠んでいく自然な感じが清新な感じをもたらす。
師は生没不明。十一世紀なかば、後宋雀、後冷泉の時代に活躍した。叡山の僧であったと能国法師などと同じく、宗教活動よりは歌僧として上流貴族に招かれて歌会に出る方が多かった。和歌が社交となり、座の芸術の様相を帯びてきた。また、中宮、女御など女性が主宰する歌会が多くなった。座の変化をつけるため、また後宮という女性社会であるため、中性的な、僧体の人は都合がよかった。
平安後期には、熊野参りなどの宗教行事が流行し、精神生活の不安、末世思想などから、祈祷が盛んになり、生活と宗教が混じり合うようになった。
歌の世界でも聖俗の混合が行なわれ、歌法師たちが、いわば芸人としてもてはやされたのであった。

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