新連歌集ー2


名残表

1、輿入れは荷駄も通はぬ峡の村      正謹
2、 思ひもかけぬ大水の出て       忠夫
3、たぎつ瀬の那智の御社いかばかり    宜博
4、 ま青なる空たぢろがぬ雲       正謹
5、うつむきて校歌を聞ける球児らに    和伸
6、 作者を知れば名ある人なり      忠夫
7、奥座敷色紙短冊とりかこみ       裕雄
8、 伏籠の衣かをりたつ閑        紅舟
9、藤原と源氏の姫の争ひに        忠夫
10、 痛みは探し軽き言の葉        正謹
11、旅寝する涙も月に堰かねて       牟世
12、 今にも待つと告げよ秋風       宜博
13、つづりさせ鳴くてふ虫も雌を求め    忠夫
14、 命短し露の芝道           裕雄

新・連歌集ー1

連歌集「竹林」より

以前「読み書き出版」コーナーで連載した歌集の続きです。
高橋禮子講師の歌集は暫くお待ちください。
初表

1、歌いざや竹の曲(はやし)に月もがな    宜博

2、 虫の声はた惜しむべき宵         紅舟

3、大野ろに鹿呼ぶ勢子のひそむらん      正謹

4、 仮庵の軒覆ふ白萩            柏全

5、川舟の漕ぎゆく水の清くして        忠夫

6、 涼しき雲を笠の道づれ          牟世

7、いかがはと、思ふ夕立こともなし      和伸

8、 鴉の群もしづまりし森          裕雄

飛行船    高橋 禮子

 
飛行船

高橋 禮子
きょうこそは遊びごころをためさんと県庁二十五階のブランチ

上空に五つ六つの飛行船ごらんのどかな雲のアピール

雪かぶる日光の山を眺めつつ哲学しているどう生きようか

こんなにも涙ぐましきことだった誰であっても生きるってことは

透き通る空間にいて眺めいる東西南北ひかるひたち野

東京が大好きだった母なのに母のひとよをふいに思いぬ

おひさまが朝な夕なに声かけるだからお山は下を向かない

ほがらなる夕日吸い込むためならん筑波は藍を深く沈める

ゆうるりと巡る目が捉えるは路上の車おとなの玩具

キャリアカー洞持つもんで後続のマーチするりと吸い込まれそう

笠小のみんなで唱えた「アブラカタブラ」子らの遊べる校庭見下ろす

高みより眺めるからこそ見えるもの限りのあらざり春夏秋冬

西日より朱いろのメール届きたりあなたまもなく六十四歳

箱の重さ  高橋 禮子


箱の重さ

高橋 禮子

青春の便りびっしり詰められて箱の重さは一・五キロ

読み返すレターそれぞれ三角の四角の愛をころがしている

棄てるには惜しいフレーズ五つ六つ拾いて呑めり誰も見ていぬ

とっときの箱のひとつを無に戻し生れたる空間わたしの未来

バトラーの後ろ姿に似ています沈まんとする五時の太陽

シフトチェンジのためであったら一日を内に隠りて誰とも話さぬ

ななめなる日差しを浴びん北風の洗礼受けん大樹のごとく

自が影に怯えることはないだろう烏地上に影を走らす

地に生きる植物なべて潔しいかなる風にも抗うことせず

春近しー2  高橋 禮子

春近し-2

高橋 禮子
透き通る二月の空よ画布となれ描きてゆかんわれのこれから

水瓶座生まれでよかったわが肩に言葉湿らすみずがめひとつ

冷えのこるやよい二日の桜山ぐるり巡るも人まばらなり

咲くまえの桜大樹に耳を寄せしかと聞いてる水のたよりを

負けるのはことさらいやという人の洩らす言の葉カサリかさかさ

水茎とうことばころりと転がりて〈水を言葉も欲しがっている〉

春まろむポストの赤に差し出さん夕べ潤う手書きのたより

ひそやかにみずを香らす水だより君にひとこともう春ですね

烈公もごらんの通りさわさわと湧きでる泉に人ら寄りくる