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先生方の作品集

太古の自然を感じる足音

作 桐山健一

 僕は落葉の音が聴こえる森を歩くのが好きだ。
枯葉を踏む音は、どこか遠くに聴こえる。初雪が舞う小さな田舎道だったり、渓谷の紅葉がキラメク山道だったり、幾つもの樹から舞う落葉の下を歩いている僕がそこにいる。
風が吹き、枯れ葉が道に転がる音が聴こえてくると心が静かになる。清らかな大気を吸い込むと、自然を感じる細胞が生き返るのが分かる。心が森の色に呼応して、森の気持ちが通じる。

 僕は森を歩きながら、僕の心に住むもう一人のYと話をする。数え切れないたびを同行したYは、青い海のこと、濃い緑の山のこと、紅葉に映える渓谷のこと、荒野に住むグリズリーやカリムのこと、数えきれない感動を語り始める。自然の静寂は、心に潜むYとの語らいの世界でもある。
ルソーは森の一人歩きが、人を自然に帰らせると言った。時として、歩きながら雑事を思い出す。そんな時、立ち止まり眼を閉じ、大きく深呼吸をする。すると雑事は消え、かつて観た、青い世界や緑の世界が心のスクリーンに拡がる。再び歩き出す。
落葉を踏む音が鮮やかに心に響き、鳥の声や樹から舞う葉音まで聴こえる。こんな時、僕の五感は鋭敏になる。僕は頬を射す優しい光の温もりを感じる。

 目標を持って力んで歩いたり、何か価値を求めて歩いては、心を閉塞させる。
この季節、生まれたままの野生の心で。森の優しさを享受する。大切なことは、今生かされている足で、大地を踏みしめる。すると大地と接する足は、太古の自然を感じる。


XOOPS Cube PROJECT