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先生方の作品集

   音 読

村山 恵美子

 作家Fさんのエッセイ集には、近所に住んでいる孫の話がよく出てくる。
ある日、孫が来たことに気付かず本を読んでいると、
「じっちゃん何やってるの」
と後ろから聞いてきた。そのときFさんは声を出して本を読んでいた。
「おう来てたのか。何ってお前、これは音読だろう」
「オンドク?」それはなんだと孫が問う。
孫は小学校一年生だ。近頃の学校では音読をやらないのだろうか。
 
音読をやると頭がよくなるんだ。喋るのもうまくなるしな、本がすごく楽しくなるぞ。
そう説明してやったら「ぼくもやる」と真似し始めた。ほほうと喜ばしく思った。
だが、子供の甲高い音読の声が結構うるさい。感情のない棒読みがやかましいのだ。
今さらうるさいからやめろとも言えない。やかましさを我慢するうちに、孫の読み方も徐々に上手くなったのかあまり気にならなくなった。
Fさんは机に向い原稿を書く。その後ろのほうで孫が腹ばいで音読
飽きたら「じゃあね」と勝手に帰る。そして小学3年生になった孫は、クラスでたった一人の音読名人の称号を得たという。

 恥ずかしながら読書があまり得意ではない私は、本を真剣に読んでいるのに途中で何がなんだか分からなくなることがある。世間一般に名作と言われている有名な小説も、一冊最後まで読み終えたのにもかかわらず、「はて?」と思うこともあるのだ。どうしてこうなってしまうのか自分でもよくわからない。
ふと音読の話を思い出し、なんとなくやってみた。するとあら不思議、想像力がどんどん働き情景や登場人物が生き生きと動くではないか。これは俄然面白い。会話文が出てくると役者気分で感情をこめて読みたくなるし、声の高さはこれぐらいかしらと工夫もする。ラジオドラマをやっているような俄女優気分とでも言ったらいいのか、なんだか楽しい。

 黙読するよりも音読する方がスピードは落ちる。でもゆっくりになったことで、途中で訳がわからなくなることも減ったし、読めない漢字をちゃんと調べたりもする。音読ってなかなかいいもんだと最近気に入っている。読み聞かせボランティアに熱中している友人の気持ちが、少しわかるような気がする。
お気に入りの音読なのだが少々難点も。それは、もの凄くエネルギーがいるということ。つまり音読は疲れるのだ。声も枯れてきて長時間はやれない。読書も体力勝負なのだなとつくづく感じている。


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