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先生方の作品集

いつもの病院で

          村山 恵美子

 定期健診のために出向く病院は、実に静かです。患者がいないために静かなわけではなく、広い待合室には沢山の人がおり診察室の近くに座りたくても、なかなか近い場所に空席を見つけられないほど混んでいるのです。病棟も8病棟までありベッド数も数百ある大きな病院です。
 ふいに「キーッ」と子供の奇声がして、皆が一斉に声がした方向を振り向きました。若い母親に連れられた3歳ぐらいの女の子が、
「まあだ? ねえ、ママの順番まだなの?」
待ち疲れたのでしょう、ぐずぐずと身体をくねらせ母親の足に絡み付いています。
「もう少しだからね」となだめ、母親が抱え上げて膝に子どもを乗せました。眠くなったのか子どもは母親の首にしがみつき、母の掌がその背中をゆっくりさすっていました。

 この病院には小児科がないのです。あるのは循環器内科、消化器内科、呼吸器内科、脳神経内科といった各種内科と外科だけ。人は沢山いても子どもがいない。静けさの理由はこれでした。
 病気になってぐったりしている子どもの姿を病院で見るのは辛いものがありますが、大人だけしかいない病院も、なんだか寂しく辛いものだなと感じてしまうのは、年をとっていく私の身勝手な思いなのでしょうか。
 私が診察を終えたとき、母と子の姿はもうありませんでした。


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