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先生方の作品集

私のキャンドルナイト

ローソク_0.jpg SIZE:119x159(29.4KB)

 入浴も食事もいつもより早めに済ませ、食卓の上に花を飾り、結婚記念日用のローソクを置いてムードづくりをしました。そして私の席の向かい側に夫の写真を置きました。 七時、テレビと電灯をすべて消しました。ローソクに灯りを入れるとパッと虹色の暖かい輝きが私と夫を包んでくれました。 夫は額縁の中で微笑んで、さあ語り合いましょうと言っているかのようでした。私はBGMに用意していた自作の音楽をかけました。

 あれから一年経ちましたね。あなたが肝臓ガンで旅立つ最後の瞬間に、私があなたの耳元でささやいたお別れの言葉、あなたは覚えていますか? 「ほら、みてごらん。あなたの好きな花がいっぱい咲いているよ。赤や黄色や紫、見えるでしょう。ほらあなたの好きな鳥たちも飛んでいるよ。メジロ、ウグイス、コジュケイも。あなたの好きな音楽も聞こえるでしょう? ほら向こうでお父さんお母さんが手を振ってるよ。さあ飛んで行きなさい。あなたに逢えて良かった。本当にありがとう」と。

 あなたは私のこの言葉に応えるかのように、優しい天使のような笑みを浮かべて昇天して逝きましたね。その穏やかな姿に私はどれだけ救われていることか。またあなたは度々夢路に立ち寄り、共に過ごし、無邪気な姿さえ見せてくれましたね。あまり心配しなくても大丈夫だよ、とも言ってくれました。時には寂しさに打ちのめされそうになる私を、額縁の中で笑って話しかけてくれていますね。また風が頬をそっとよぎると透明人間になってそばにいてくれる気配さえ感じさせてくれます。

 もうどこを探してもあなたはいないのだと、身体全体で受け止めるまでには随分と日数がかかりましたが、私はもう大丈夫です。この街の人々が明るく優しいかぎり、私は一人でも生きてゆけます。みんなの心がつながっているかぎり、私は元気になれるような気がします。

 でも私もいつかはそちらに逝きます。その時は道に迷わないように迎えに来て下さいね。あなたが遺してくれたたくさんの想い出と教えられる数々の強い精神力を学んで、私の残された人生を歩いていきます。ありがとう。

 ローソクの光のもとで過ごしたこのひととき、亡き夫も本当に参加してくれたような気がしました。これからも時々、この幻想の世界に浸ってみたく思いました。さあ電気を点けて現実の世界へ戻りましょう。



☆この作品は大地宅配主宰キャンドルナイト・プロジェクト大賞・立松和平賞を受賞した作文です。(2002年)
講評
 花と音楽に包まれながらお連れ合いと過ごされた「キャンドルナイト」の様子が目の前に広がるような文章でした。一緒に幻想的な世界に参加させていただいたような気分です。お連れ合いへの愛情、この1年間の辛さ、そして現実を力強く受け入れるお姿が印象的でした。文章全体に力強い優しさが感じられ、読んだ者の方が力をいただいたという意見で一致し、大賞とさせていただきました。

★立松和平氏は2010年2月8日62歳で永眠されました。
心よりご冥福をお祈りいたします。


添付ファイル: fileローソク_0.jpg 294件 [詳細]

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