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2、もの忘れ

綾部の里に花が咲く

第四章 あやべ産業祭り

3、バスの中

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 3、バスの中
 
 小太郎が歩き出そうとしたとき、楽団の音合わせが始まった。
 音楽好きの小太郎は、そこにいた司会の土屋えつ子に話しかけた。
「これがチラシに載ってたMAF管弦団?」
「そうです」
「MAFって、また会うフレンドって意味かね?」
 土屋えつ子が呆れ顔で小太郎に説明する。
「MAF管弦楽団というのは、Mが舞鶴、Aが綾部市、Fが福知山の頭文字で、マーフって読みます」
「なんだ、地方の寄せ集め楽団か?」
「とんでもない。創設35年の歴史があるアマチュア楽団で、メンバーには大学吹奏楽経験者、音大出身者、元プロで活躍して故郷帰りした奏者もいて、京都府中丹地域を中心に定期公演や特別公演、訪問演奏、各地のイベントに招かれて大人気なんですから」
「へえ、そてにしても、何だか派手な楽器ばかりだなあ」
「今日は金管アンサンブルだから仕方ないでしょ」
「そうか? ゼンマイのホルン、トランペット、アルトホルン、あれは何だい?」
「どれですか?」
「あの、ホルンとペットの合いの子みたいなやつ」
「あれは、ユーファンタムよ。あれでなかなかいい音が出るのよ」
「詳しいね。土屋さんも楽器を?」
「あたしの世代は、ピアノブーム時代の申し子だから、ピアノだけは誰でもひけるのよ。大橋さんは?」
「あれ? おれの名を?」
「NETで見ました。市長と握手してたコンサルタントさんでしょ? あなたも楽器を?」
「おれは、エレキギター。もう止めちゃったけどさ」
「ロッカーだったのね? だったら十二時からここでアコースティックユニットの演奏もあるのよ」
「残念だが、その時間じゃ戻れないな」
「だったら、三番街でフラメンコは? 十一時四十五分からだけど」
「ありがとう。土屋さん」
「今後は、えっちゃんて呼んでください」
 予定の時間よりかなり遅れてMAF管弦楽団の演奏が始まった。
 なるほど、メンバーの奏でる音の質がいい。これなら土屋えつ子の自慢も納得がゆく。
 小太郎はその場を急いで去った。十時四十五分から三番街の特設会場で、太極拳教室が始まっているはずだ。
 お握り試食会の前に、それも取材したいが、ともあれ、どこにでも特設会場があるらしい。
 各会場はマイカー乗り入れ禁止で、駅前に五百台収納の無料特設駐車場があり、そこと各会場を巡って無料シャトルバスが運営されており、どの会場にも行けるから単純で安心、迷子になることもないし取材も楽になる。
 無料シャトルバスは、ほぼ十分間隔で動いていて、白瀬橋南ー橋総合庁舎前ー西町二丁目ー綾部駅南口ーJAこのくに本店ー日東精工。そこから逆に回って、由良川にかかる知らせ橋を渡らずに、そこでまたUターンしてぐるる回っている。
 小太郎は、ここから離れればいい、と単純に考えて、西町二丁目まで歩き、そこから東方面行きのシャトルバスに乗った。
「ここここ、お兄さん、ここよ!」
 小太郎が女性空誘われなんて、珍しいことだ。なにか天変地異が起こらないといいのだが、悪い予感がした。
 見ると、さきほど中上専務理事に質問をしていたご婦人ら総勢四人、自分たちの座った座席の間に一人分座れるように席を空けて小太郎を手招きしている。
「ほら、やっぱり東京から来た人口増加のコンサルタント、大食いのチャンピオンでょ?」
「狙いは、B級グルメの食べ尽くしですか?」
 小太郎を種馬扱いにした主婦の栄子が、手を振って小太郎を誘導している。小太郎は催眠術にでもかかったようにふらふらと体を揺らしながら、その種馬主婦と、大島町の美容院ミラクルのママ・ミツエと記憶しているご婦人の間に挟まれて座った。
「わたしたち、運命の出会いなのよね」
 よく考えれば、小太郎がふらついたのはバスが発進したからで、座席は一つしかなかったのだからここに座ったのは必然であって、運命的な出来事でもなんでもない。それでも種馬主婦は主張する。
「あのときは変なことをお願いしてご免なさいね。でも、諦めてはいませんのよ」
「なにを?」
 言いかけて小太郎は息を呑んだ。衝撃的なお願いの内容を思い出したからだ。
「いや、ぼくは遠慮を・・・」
「あら、遠慮は無用よ。わたしだって黙って引っ込んでたら・・・」
「仲間に笑われる、狙った獲物は逃がさない、そうでしょう? 栄子さん」
 ミツエが艶然と微笑んで興味深そうに二人を交互に見た。
 あとの仲間も面白がって成り行きを見守っている。ミツエが時分から名乗って、種馬主婦らも紹介した。
「申し遅れましたが、あたしは蔵林ミツエ、こちらが順に唐沢栄子、安東芳江、金井喜美代さんです」
「大橋小太郎です」
「知ってますよ。カフェ・プントで一緒に食事した仲ですから」
 バスが停車して身体が揺れて栄子に寄りかかる形になって慌てて離れた。もう綾部駅南口に着いている。
「どうする?」
 小太郎の体温を感じてか、嬉しそうな表情で唐沢栄子がミツエを見た。
「この人の行くところまでご一緒しましょ」
「どこまで?」
「決まってるじゃない。B級フェステ会場でしょ?」
 この瞬間、この日の小太郎の運命は決まった。なぜか、このミツエの言葉には逆らえない不思議な力がある。
 そればかりではない。小太郎が立ち寄るべき太極拳、お握り、丸太切り競争などがスッキリと頭から消えていた。
「だったらバスに乗らなくて歩いていけたのに」
「あ、今の駅前で降りればよかったのね?」
 バスはすでに動き出しててる。
「いいのよ。このバスはまた戻るんだから」
 西町二丁目から乗ったバスが日東精工で折り返して、JR綾部駅に着いたところで小太郎を包み込むようにして一行は降りた。 ここなら確かに、商工会議所前から歩いても大した距離ではない。
!

4、あやべB級グルメフェスタ


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